2019-10-28から1日間の記事一覧

「めぐり逢う理由」 (第一章 百年前の恋)-5-

「み子、みぃー子! ねえ、聞いてるの?」 「え? ええ、ああ、ごめんなさい。何?」 「何じゃないわよ。み子、あなたこの頃少し変よ。ぼーっとしたり、ため息付いたりしちゃって」 「そんなことないわよ。普通よ。私は。で、何の話?」 「今度の日曜日、一…

「めぐり逢う理由」 (第一章 百年前の恋)-4-

翌日、女学校で奈美に会った多み子は、プーが見つかったことの報告と一緒に探してくれたことへのお礼を言った。 「で? プーさん結局どこで見つかったの?」 「えーとそれは……あっ、そうそう、海岸沿いを一人で歩いていたの。偶然そこを私が通りかかったの。…

「めぐり逢う理由」 (第一章 百年前の恋)-3-

―「痛いのはこっちの足かえ?」― 「え?」 多み子は緊張感のない男の言葉に、顔を覆っていた自分の手の指の隙間から思わず男の顔を覗き込んだ。 「靴脱いでみな」 「はい?」 「靴履いてちゃよく見えんじゃろ。早よ、その紐靴脱いでみいや」 「あ、は、はい…